平成25年3月、内視鏡手術支援ロボット「ダ?ヴィンチSi」を滋賀県内で初めて導入しました。ダ?ヴィンチを使った手術では、医師が3D画像を見ながらロボットを遠隔操作することにより、安全で正確な手術を行うことができます。
平成30年4月から保険適用の手術が拡大し、本院では次の対象疾患に対して実施しています。
医師はモニターに映る高解像度の3D画像を見ながら、電気メスやカメラなどの器具を取り付けたアームを遠隔操作します。このアームは人間の手首よりも細かい動きが可能で、手ぶれ防止の機能を備えており、また、カメラは自由にズームできることにより、医師を補助し、負担を軽減することができます。
患者さんにとっても、手術中の出血がこれまでの内視鏡下手術に比べて半分程度にまで抑えられ、傷口も小さいため回復が早く、負担が少なくなるというメリットがあります。
本院では、平成22年9月より新たに高精度放射線治療システム(リニアック)を導入しました。これにより、悪性腫瘍等の放射線治療がより安全で効率的に行えるようになりました。
がん細胞に対して放射線を照射し、がんを切らずに治します。リニアックは、従来の装置とは異なり装置自体が回転し、腫瘍等の形状に合わせながら集中的に放射線を照射します。
本院では、より正確な放射線照射を行うため、CTやMRIで得られた情報をもとに、三次元治療計画を立て、治療を進めています。さらに、患者さん1人1人に合わせて樹脂製の固定具(シェル)を制作し、より高精度な位置合わせを行っています。また、がんの進行によって引き起こされる痛みやさまざまな症状に対する放射線治療(緩和照射)も積極的に行っています。
リニアックの精度はミリ単位で、きわめて正確にビームを照射でき、健康組織への被ばく線量を大幅に軽減できます。 本院では、腫瘍の形に合わせてコンピュータが最適な方法を計算し、複数のビームにより放射線に強弱をつけて照射する方法(強度変調放射線治療)を積極的に行っています。最新鋭のリニアック導入により「1回転照射 強度変調放射線治療」が行えるようになり、これまで以上に、高品質かつ効果的な治療が可能で、治療時間も短く、患者さんへの負担が緩和できます。
小線源治療とは、体外から放射線を照射するのではなく、小さな放射性物質を治療する局所に挿入して行う放射線治療のことです。
非常に弱い放射線を出す直径約0.8mmのカプセル(ヨウ素125シード線源)を前立腺内に50~100個挿入し、前立腺内のがん病巣へ放射線を照射します。線源から体の外に出る放射線は非常に弱いもので、治療後も普段どおり周囲の人と接することができます。 放射線量は徐々に弱まり、1年後にはほとんどゼロになります。
本治療法の特徴と利点として、1)性機能が維持されやすく、尿失禁がおこりにくい、2)体への負担が少なく、入院?治療期間は短い、という2点があげられます。小線源治療は前立腺癌治療の中でもっとも性機能が維持されやすい治療法とされています。前立腺全摘除術に比較すると、尿失禁の起こる率もずっと低く、体の負担はかなり軽度で入院も短い期間で済みます。
腫瘍内科は、最新のがん薬物療法を実施し、高度がん医療を担う内科系診療科として、平成21年10月に開設されました。高い水準のがん医療の提供と先進医療の開発を通じて、がん患者さんに治療効果、安全性、生活の質(QOL)の面で最適の治療を提供することを目的に診療を行っています。
腫瘍内科長 醍醐 弥太郎
今日のがん医療においては、病気の進行段階に適切に対応した個別化医療と専門家チームによる総合的医療が求められていますが、わが国ではこれらを担う臓器横断的ながんマネージメントができる腫瘍内科医が不足しております。また、標準がん治療不応の患者さんは新しい治療法を求め、「がん難民」という社会的問題が生じています。
私たちは高い倫理性と科学性に基づいた新しいがん医療の開発と人材育成を推進することによって、このような患者さんへ医療を提供することも大きな課題の一つと考えております。今後ともご理解とご協力を何卒よろしくお願いいたします。
がん細胞に目印をつける「がんペプチド」をワクチンとして患者さんに注射し、がん細胞を攻撃する細胞を増殖させ、がん細胞を殺す力を高める治療法のことをいいます。 現在は、既存の標準がん治療に不応となった肺がん患者さんを対象に、がんペプチドワクチンを用いた新しい分子?免疫療法等の開発を進めています。
本院では、がんの専門医を多数有しており、例えば治療方針の決定は一人の医師の判断ではなく、疾患ごとの多職種チームによるグループミーティングを行い、最善の治療を選択しています。
腫瘍センターを中心に各診療科が連携し、最新の技術を使った手術、化学療法、放射線治療、がんゲノム医療を行っております。また治療困難症例や、複数の診療科が関わるような症例は、各領域の専門医が集合し、キャンサーボードミーティングを実施し、治療方針を決めています。
滋賀県は本院を「県がん診療高度中核拠点病院」とし、県民の求めるより高度な医療を提供できる病院と位置づけました。また、平成22年には厚生労働省より「地域がん診療連携拠点病院」(東近江医療圏)の指定を受けました。さらに、平成30年には、がんゲノム医療連携病院、令和5年にはがんゲノム医療拠点病院の指定を受けました。滋賀県内のがん診療の連携協力体制の整備を図るほか、がん患者さんに対する相談支援及び情報提供を行っています。