大腸がんは遺伝的な要因と環境の要因が関係しあって発症すると考えられています。遺伝的な要因が強く影響して発症したと考えられる大腸がんを「遺伝性大腸がん」といいます。遺伝性大腸がんは大腸がん全体の約5~10%といわれています。
遺伝性大腸がんの中で頻度が高い疾患として、家族性大腸腺腫症とリンチ症候群が知られています。家族性大腸腺腫症では、大腸に100個以上の腺腫(ポリープ)を認めることが多く、診断がつきやすいのですが、リンチ症候群では、はっきりとした特徴が少ないため、多くが見逃されているとされています。
リンチ症候群では、大腸がんの他に子宮内膜がんをはじめ、卵巣がん、胃がん、小腸がん、泌尿器のがんなど多彩な悪性腫瘍が発生することがあります。
原因となる遺伝子として、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2の4種類の遺伝子が同定されています。これらの遺伝子に変異があった場合、子供に原因となる遺伝子が受け継がれる確率は50%とされています。
日本では保険診療での遺伝子検査は認められていないため、条件を満たした施設でのみ自費診療で行うことができます。当院ではすでに、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」について遺伝外来を開設しておりますが、「遺伝性大腸がん」についても同様にカウンセリングおよび遺伝子検査を行う体制が整いました。詳しくは、主治医や消化器外科外来または、がん相談支援センター(TEL: 077-548-2859)までお問い合わせ下さい。