東近江がん診療セミナー

 

第78回東近江がん診療セミナー

令和7年6月5日(木)17:30? 


 6月のがんセミナーは、腹水について取り上げました。
 第1部では、外科医師の髙尾先生より『腹水の病態と治療』と題して、腹水の原因や原因疾患、治療方法について解説していただきました。腹水には、大きく「漏出生腹水」と「滲出性腹水(炎症性腹水)」があり、これらは原因疾患により分類されること、治療には水分、塩分制限を行う一般的治療と、利尿薬やアルブミン製剤による薬物療法があり、改善しない場合は、腹水穿刺排液とアルブミン製剤を補充する方法や、腹膜頸静脈シャント術、腹水濾過濃縮再静注法(CART)などが適用となることなどをお話いただきました。
 第2部では、臨床工学技士の速水主任より『CART治療について』詳しく説明していただきました。CARTとは、おなかに針を刺して溜まった腹水を抜き、細菌、がん細胞や血球成分を取り除き、アルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で戻す治療法です。(旭化成メディカルHPより引用)臨床工学技士として30年間CART業務に携わってきた中での変化や、CART後の発熱と処理速度の相関性や、再静注前のNSAIDsやステロイド使用の有効性等についてお話をしていただきました。
 第3部では、がんの終末期の患者さんに2度のCARTを実施し、患者さんが望む最期を迎えるために多職種で連携した症例を南3病棟の磯部看護師に発表していただきました。
 セミナー後の質疑では、患者さんが在宅に移行した場合の腹水コントロールをどうするかが問題提起されました。患者さんの状況により課題は違いますが、引き続きがんセミナーでも検討していきたいと思います。 
 
 次回『第79回東近江がん診療セミナー』は7/3(木)の開催予定(肺癌の症例提示)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

外科医師 髙尾先生

第1部講演

臨床工学技士 速水主任

第2部講演
 

南3病棟 磯部看護師

 第3部講演

外科医長 山口先生 

 1?2部座長

南3病棟 北井師長 

 3部座長

第77回東近江がん診療セミナー+第92回ひがしおうみ☆栄養塾

令和7年5月15日(木)17:30? 


 毎年恒例で5月のがんセミナーは、ひがしおうみ☆栄養塾とのコラボ企画で「がん悪液質治療薬」をテーマに開催しました。
 がん悪液質とは「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されています。(Fearon K,et al.Lancet Oncol.2011;12(5):489-495.)
 がん悪液質は進行がん患者の80%に認められ、体重減少と食欲不振といった典型的な症状に加えて、化学療法の効果の減弱、副作用や治療中断の増加、さらには生存率にまで影響を及ぼします。がん患者における体重減少は、その程度に応じて予後を悪化させるため積極的な治療が必要とされています。(日本がんサポーティブケア学会「がん悪液質ハンドブック」より)
 しかしながら、これまで国内ではがん悪液質の治療薬はありませんでしたが、第1部の講演では2021年にがん悪液質の治療薬として承認されたアナモレリンについて、対象となるがん種や適応条件、禁忌などについて勉強をしました。
 悪液質には、「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3つのステージがあり、早期からの栄養サポートを行っていくことが重要とされており、第2部では、当院薬剤部によるアナモレリン投与症例における開始時期と効果について、日本栄養治療学会近畿支部第16回学術集会で発表された演題に加え、関連する論文3編が紹介されました。
 次回『第78回東近江がん診療セミナー』は6/4/(木)の開催予定(CART:腹水濾過濃縮再静注法)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

小野薬品工業(株) 安部様

情報提供

主任薬剤師 大住先生

第2部講演
 

伊藤明彦先生

 総合司会

 

 会場の様子